常連さんとタバコと恋のはなし

初めての一人暮らしをスタートさせてすぐに初めてのアルバイトを始めました。

家から近いという理由だけで選んだのは何の変哲も無いコンビニのレジ。

仕事は覚えてしまえば流れ作業で、ぼーっとする時間も多く、どちらかというと暇でしたが、半年もする頃には常連さんに顔を覚えてもらえるようになり、話し相手ができたので、そこそこ楽しんで働いていました。

常連さんはほとんどがおじさんでしたが、そのなかでも一人だけ、私より少し年上で背の高い、ハーフのような顔立ちので、いつも同じタバコを2箱とブラックサンダーを買っていく男性がいました。

「ブラックサンダー、おいしいですよね、私も好きなんです。」
無意識に、口から出た言葉でした。

いきなり話しかけてしまったので、相手も一瞬驚いた顔をしましたが、すぐに顔をくしゃとさせて「また買いにきます」

その日から、毎日夕方18:00すぎに現れるようになったこの常連さんと私のお話です。

私が働いていたコンビニの裏には、医療系の専門学校があって、そこの学生さんもよく買い物にきていました。

私はすぐにこの人がそこの学生さんだと気付きました。

いつも同じタバコを買うので、この人がレジに来ると同時にタバコを2箱用意するのが習慣になりました。

「よく覚えてますね、いつもありがとうございます。」

初めて話してから一週間。もう一つ気づいたことは笑うとすぐに顔が真っ赤になること。

もともとハーフのような綺麗な顔立ちで、身長も180センチくらいあったので普通にしているとすこし怖い印象でした。

ですが話すとシャイで恥ずかしがり屋で、照れ屋さんなんだとわかりました。

年上だったし、そのギャップがかわいいなあと、話すたび心が和んでいました。

バイトを始めて3ヶ月が経った頃。

今日も同じタバコとブラックサンダーを買いにきた彼は、なんだかお疲れ気味だったので、「なんだかおつかれですか??元気がないようにみえたので」と声をかけました。

すると「そんなことないんだけど、あーうん、疲れてるかも。いま試験続きでさ」

彼はリハビリの勉強をしていた。

私は医療のことはなにも知識がなかったので、相談に乗れるわけでも、ましてはそこまで親しいとも言えない。

しょせんはバイトと常連さんという関係でしかなかったため、うわべの言葉しかかけられなかったが、彼が現れるたびに何気ない言葉で励ましていた。

「試験おわったら、なんかご褒美くれる?」

試験まで一週間というとき、いつも通りタバコを買いにきた彼はこういった。

「ブラックサンダー?笑」

私が少しふざけると、「・・・デートとか。」

小声で彼は言った。

私はからかわれていると思った。
だって、彼はすごくモテていたから。

よく友達と買い物にきていたので、会話の内容はよく聞こえていた。

告白を受けているという話は何回も聞いたし、買い物に来る女の子のなかでも「あの人とお友達なんですか?」と聞かれたこともあったから。

「はいはい、試験までもう少しなんですから、年下からかうのはやめて集中してくださいね、」

そのときの彼は少し寂しそうな顔をしたけど、すぐにいつもの笑顔に戻ったから「やっぱりからかってたんじゃん。」と思った。

私はきっと傷つくのが怖かったんだとおもう・・・・

試験も終わった頃、私は彼氏ができた。同じ学校のひとだった。

バイトを始めて、1年が経った。

その日は店長に言われて遅くまでバイトとなった。

22:00

いらっしゃませーと言った先には彼がいた。

「今日、何時に終わるの?」

「もうすぐです。どうかしましたか??」

「少し時間もらえるかな、裏で待ってる。」

私が返事をするまえに、彼はお店を出ていった。

自意識過剰と言われるだろうが、それがなにを意味しているか。
これからなにを言われるのか私はわかっていた。

彼に告白される。

私は彼が待っているところへむかった。

まっすぐに私をみて、一言だけ言った

「好きです。」

聞きたくなかったと思った。

この返事をしたら、今まで通りこの人と話せなくなる。

でも私は、「ごめんなさい」

そう、一言だけ告げてその場を去った。

歩いて歩いて、家に着いたとき、私は顔が濡れていることに気づいた。

きっと私は彼が好きだった。

それから数日、久しぶりに来た彼に、私はいつも通りタバコを2箱用意した。

「〇〇番のたばこで。」銘柄は変わっていた。

少し寂しいような気持ちになったけど、たぶんこの時、私たちは別の道を踏み出した気がした。

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yamaarashi Written by:

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